書評『増刊2017 プレスセラミックスの臨床』山﨑長郎

HYORON Book Review - 2017/11/20



レビュアー/山﨑長郎
(東京都渋谷区・原宿デンタルオフィス)

プレスセラミックスの意義

 全世界の歯科修復物を見わたしたとき,最も使用され,普及しているマテリアルとシステムは,二ケイ酸リチウムのプレスシステムであることは疑う余地がないだろう.

 プレスセラミックスは,その簡便性と高い精密性により,ミリング法を用いたCAD/CAM とは一線を画し,長く,そして広く使用されてきた.ジルコニア全盛の現在においても,このシステムとマテリアルの有用性に関しては何も変化はない.また,日本においても非常に大きなマーケットを持っていて,多くの歯科医が,一度は使用しているのではないだろうか.

 これまでプレスセラミックスはIvoclar Vivadent 社 の IPS e.maxpress の独壇場であったが,現在,日本の各社がそれぞれの立場で,特徴のある材質を持って市場に参入してきた.しかし,このような背景であるにもかかわらず,たしかにプレスセラミックス全体を網羅し,解説した書籍はあまりないと思われる.まさに今のタイミングで,もう一度プレスセラミックスの臨床を見つめ直すことが,ある意味で重要と思われる.

本書の内容について

 これらをふまえて,本書は発刊時期といい内容といい,素晴らしい出来栄えになっている.まず,構成に隙がない.もちろん各執筆者の人選も若手・ベテランと,これもバランスがよい.

 最初に「プレスセラミックスの現状」として,総論と材料学的特性を解説し,次に「プレスセラミックスの臨床」における各ステップを,形成,印象,技工,接着操作について具体的に手順を追って述べ,最終の咬合調整と研磨についても丁寧に説明している.そして実際の臨床においてどのようなレストレーションに応用するか,インレー,アンレー,ポーセレンラミネートベニアについて紹介,クラウンとブリッジに関しては前歯,臼歯のクラウンから前歯部のブリッジへと,次々と解説をしている.

 さらに,国内で販売されている代表的なプレスセラミックシステムを,各製品の特徴と使用方法について詳細に述べている.しかも最後に装着後のメインテナンスを加えているのが,この種の本としては珍しく,新鮮でもある.

 私自身も興味を持って読ませていただいたが,本書を手にした皆様はおそらく,自身の臨床で使用しているプレスセラミックスのケースに照らし合わせて,馴染み深く読むことができると思われる.

デジタル化の流れの中で

 修復学の分野は,周知のとおり診断・分析においてデジタル化がかなり進んでいるとはいえ,プレスセラミックスは現在の臨床において欠かせないシステムである.マテリアルも酸化ジルコニアと二ケイ酸リチウムの双方が,さらに深化していくであろう.

 このような現状において,本書は二ケイ酸リチウムとプレスセラミックスの特徴や臨床応用のポイント,注意点が非常に理解しやすい構成および内容でまとめられているし,何より読みやすい.

 本書をしっかりと理解すれば,プレスセラミックスの臨床にさらに磨きがかかることだろう.


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