書評『そうだったのか! CR修復』坪田有史

HYORON Book Review - 2017/10/20



レビュアー/坪田有史
(東京都文京区/坪田デンタルクリニック)

 著者の須崎 明先生は,歯科保存系で著名な臨床医であり,先生のCR 修復のすべてを惜しげもなくこの一冊の本にまとめられています.

 本の表題に「CR 修復に悩んでいる人に読んでほしい本」とあるように,臨床で多く経験する CR 修復に関する悩みやトラブルについて,すべての読者にとって霧が晴れるように解決することができるのではないでしょうか.すなわち,CR 修復のすべてが本書にある,と言っても過言ではありません.本書を著するにあたり,須崎先生の CR 修復に対する思いが結実した渾身の力をこめた一冊と感じました.

 本書のエビデンスを主に支えているのは,2015 年に日本歯科保存学会より発行された『う蝕治療ガイドライン(第2版)』です.このガイドラインで示されたエビデンスからCR 修復で起こるトラブルとその対応が解説されているため,明確に理解でき,その先に臨床のスキルアップが図られることは間違いありません.なお,『う蝕治療ガイドライン(第2版)』は,2009 年に公開された第1版と共に日本歯科保存学会のホームページでダウンロードできますので,併せて参考にされることをお勧めします.

 本書は,CR 修復を3つの視点から3章に分けて解説され,著者が日頃発信したい臨床における CR 修復のエッセンスがコラムとして書かれています.また,写真やシェーマなどが非常に多く使われているのも大きな特徴と言えます.特に臨床ケースは,CR 修復のステップの1つひとつがきれいでわかりやすい写真を使って解説されており,読者が理解するために非常に役立つでしょう.

 Ⅰ章では,「こんな時どうする?自信を持って対応できる! CR 修復のトラブルシューティング」と題して,「マージンの褐線の原因と対策」「CR の脱落への対策」「術後疼痛の原因と対策」の3項目に分けられています.

 例えば「マージンの褐線の原因と対策」では,日常臨床で目にするCR 修復の辺縁の褐線について,現在の接着の科学が説明されると共に,臨床での対策法までが示されています.そのほかの臨床トラブルに対してもエビデンスをもって,原因と対策に関して多くの臨床ケースを示しながら,解説されています.

 Ⅱ章では,「治療オプションとして手に入れたい“ここまでできる!”CR 修復の適応」として,2級 CR修復の術式,感染歯質の除去の勘どころ,根面う蝕の対処法,乳歯のCR 修復,Tooth Wear に対する CR修復など,日常の臨床で遭遇する比較的難度の高い CR 修復を,著者が活用しているマテリアルを紹介しながら,実際の術式をステップ・バイ・ステップで示しており,誰もが理解できるよう腐心された内容になっています.

 Ⅲ章は,「臨床のレベルアップ!一歩上をいくための CR 修復のテクニック・コンセプト」として,レイヤリングテクニックの実際を示しながら,審美性が高い CR 修復を目的とした自費診療による術式を紹介しています.保険医が自費で CR 修復を行う場合,非保険材料の CR を使用することが原則ですが,それらの CR を使用したとしても高い審美性が得られなければ,患者に満足してもらえません.この視点で著者が行っている自費の CR 修復の実際が詳細に示されています.

 多くの臨床医がもつ CR 修復の疑問に対する明確な答えがこの本の中にあり,CR 修復のすべてが網羅された必読の本と言えます.ぜひ,多くの臨床医に読んでもらい,ご自身のスキルアップに繋げ,CR 修復を施す患者さんのために役立てていただきたいお勧めの一冊です.


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