著者が語る『体のゆがみ セルフコンディショニング』福岡博史・田口直人

HYORON Book Review - 2020/10/01

対談/福岡博史(医療法人社団明徳会 福岡歯科 理事長)
 
    田口直人(医療法人社団明徳会 鍼灸マッサージ治療院RIM 院長)

 

なぜ,歯科医療従事者はセルフコンディショニングが大切なのか

福岡:私は歯科医療に35年以上携わっています.若い頃はスポーツをしていたため体の不調とは無縁でしたが,40歳を過ぎた頃から不調を感じるようになりました.最初は突然右肩が上がらなくなって,診療が困難になりました.いわゆる五十肩です.その日も患者さんの予約がしっかり入っているので,痛み止めを飲んで何とか診療したことを覚えています.その時に通院した整形外科の先生からストレッチを教わり,まじめに3週間続けたところ,すっかり痛みが取れて通常通りの診療に戻ることができましたが,初めてセルフケアの大切さを学びました.

 その後,腰痛や膝痛,またほとんどの指の腱鞘炎を経験し,その都度,セルフケアで治して今はすっかり良くなっています.このように様々な体の不調を経験してきましたが,本書で紹介するセルフコンディショニングを日頃からやっていれば,きっとこういうことは起きなかったと思います.まさに私の体自身で,この本の必要性を実感したわけです.

田口:私は15年間,歯科医師や歯科衛生士さんの体を診させていただいています.先生方の症状は様々ですが,その原因になっているのが体の歪みです.歯科の診療姿勢は他の職業に比べて,関節や筋肉にかかる負担が圧倒的に大きいのです.ですから症状が「ある・ない」にかかわらず,毎日体操などをして体の歪みが固定化しないようにケアすることが,非常に重要だと思います.

 

本書の特徴,実際の効果

田口:本書を執筆するにあたり,まず3カ月かけて歯科診療姿勢で負担のかかる筋肉や関節を細かく分析しました.さらに,歯科医師や歯科衛生士さんに実際に起きている症状や体の歪み,こりなどを徹底的に調査しました.本をパラパラめくってみると「このエクササイズは知っているよ」というものもあると思いますが,これらは歯科医師や歯科衛生士さんの診療姿勢や体の使い方を徹底分析した上で考えた,最も効果の高いエクササイズですから,ぜひ実践してください.

福岡:特に第1章の歯科診療姿勢リセット体操は,毎日行っていただきたいと思います.実は最近,再び人差し指が腱鞘炎になってしまいましたが,ただ指を揉んでいるだけではなかなか治りません.腕から胸にかけて筋肉はつながっているので,指だけほぐすのではなく,腕~胸の筋膜全体を伸ばすリセット体操を毎日しっかり続けたところ,人差し指の腱鞘炎は治ってきました.このリセット体操をやるだけでも,“体の不調が改善する”という実感が得られると思います.

 ■本書をこう使ってほしい

田口:まず第1章で紹介する「歯科診療姿勢リセット体操」は,診療姿勢で負担のかかる筋肉や関節をリセットすることに特化したメニューになっています.さらに,“短時間で簡単に行えて,最大の効果が得られるように”と考えて作ったエクササイズになっているので,これを日々の診療の合間に,30秒でも1分でも良いので毎日実践していただきたいと思っています.

 この体操がきつくてできないという方は,第2章で紹介する「症状別身体メインテナンス」を行ってみてください.歯科診療姿勢リセット体操ができない先生は,背中が張る,肩が痛いなど,何らかの症状を感じていると思います.ですからリセット体操ができない方や具体的な症状がある方は,第2章のエクササイズから始めていただくと良いでしょう.

福岡:私も日々これらの体操を実践していますが,田口先生に見てもらうと,「腕の上げ方がちょっと違う」とか「ひねり方がちょっと違う」ということがあります.本書では,特に重要な体操については動画を付け,QR コードから見られるようになっていますから,その動画を体操をする前に必ず見てください.

 動画では間違いやすい動作を解説していますので,参照しながらエクササイズを始めていただくのが,この本の使い方としてとても良いと思います.そうすることで毎日ベストコンディションで診療ができ,結果的に患者さんに素晴らしい医療を提供することにつながると思います.



福岡:私の経験を初めにお話ししましたが,体に不調が起きてからでないと「日々,体のケアをしよう」とは,なかなかならないかもしれません.私も若い頃は「こういう体操は必要あるのかな」と思っていましたが,歯科診療を続けていると必ず体の歪みは起きるので,20代,30代という若い時からぜひ実践してください.これを疎かにしていると,年数が経てば経つほど体の歪みは大きくなってきます.運動しているから大丈夫ということではなく,「歯科医療という職業に就いたからには,このリセット体操を日々実践していただきたい」というのが,私がこの本を書いた真の理由です.

田口:そうですね.症状が「ある・ない」にかかわらず,毎日一定姿勢や一定動作を続けていると,使いすぎの筋肉と使われない筋肉のアンバランスがどんどん広がっていってしまいます.歯科医師や歯科衛生士さんはもちろん,歯科助手の方も,いつも同じような体勢や動作を続けていると思いますので,体の歪みが定着する前に筋肉や関節をリセットするために,日々こまめに実践していただきたいと思います.



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