書評『増刊/最新マテリアル・ツールを活用した臨床テクニック』林 美加子

HYORON Book Review - 2021/10/27

レビュアー/林 美加子

(大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子感染制御学講座(歯科保存学教室) 教授))



 歯内療法分野の器材および技術の変革はめざましいものがある.本書には,歯内療法関連製品に関する最新情報が,エキスパートの解説と多彩な図や写真とがバランスよく収載されている.

 本書の構成は,まずCBCTやマイクロスコープを用いた診断・治療のトレンドから始まり,続いて新世代のNiTiロータリーファイルをはじめとする様々な根管治療の器材が紹介されている.次に,再感染を防ぎ,かつ破壊抵抗性に優れた支台築造のコンセプトや,再生歯内療法の知見も含まれている.

 筆者の教室の若い歯科医師に「何故,大学で歯内療法を学ぼうと思ったのか」と問うと,卒前教育では習得できなかった歯内療法の知識や技術を学ぶには,大学がベストだと考えたという.筆者の日頃からの観察によると,若い世代には若い世代なりのデジタルツールを駆使した学びの方法があるようである.

 そこで,卒後5年目の歯科医師に,本書の感想を尋ねてみることにした.ここでは3名の意見を,あえて校正なしで以下に掲載させていただく.

■歯内療法の器材のトリセツ

 本書の特に評価すべき点は,根管治療用器材が新旧交えて豊富に紹介されており,その使用方法が具体的に詳説されていることである.故に,本書は最新の歯内療法に使用する器材の,取り回しの良い“トリセツ”といった趣がある.適応症例や臨床への導入の難易度(初心者向きか熟練者向きか,あるいは製品の価格帯など)といった共通の評価項目を設け,それらを評価した表などがあれば,読者はより簡便に各器材の特徴を捉えられるのではないかと感じた.

■根管治療の原理原則が大事


 まず,自分が普段使っている器具や材料についての知識が少なかったことに気づきました.今まで特に意識せず使っていましたが,使用方法や特性,避けるべき条件もあるため,今後気をつけようと思いました.次に,さまざまな器具が販売されていますが,どの器具を使うにあたっても,根管治療についての原理原則の理解が大事だと言うことです.NiTi ファイルは確かに便利ですが,それだけで治療が成功する魔法の器具ではないと改めて思ったので,自分の勉強も大事にしようと思いました.

■歯内療法のレベルアップのために


 この1冊で,歯内治療の最新のマテリアルやテクニックが網羅されており,臨床のレベルアップのため素晴らしい内容となっている.本書で述べられているマテリアルやテクニックは今後さらに歯内治療の中心を担っていくと思われ,歯内療法のレベルアップのため活用したい.次回にはQRコードによる動画が閲覧できれば,なお素晴らしいと感じた.

 3名それぞれの捉え方があるが,筆者は,冒頭の総論的な導入から,最新器材の紹介,そして注目の臨床トピックへの展開という構成が実に秀逸であると感じた.そして,視覚にとびこんでくる良質な写真や図をたどりながら,次々と読み進めることができることより,本書は,歯内療法分野の最新情報を効率的に吸収できる,いわゆる「学びの扉」ともいうべき貴重な一冊である.

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