書評『ポジショニングとミラーテクニック』阿部 修

HYORON Book Review - 2018/10/10



レビュアー/阿部 修
(東京都武蔵野市・平和歯科医院)

ポジショニングとミラーテクニックに重点を置いた初の書籍

 2 ~ 3%で推移していたわが国の歯科用マイクロスコープの普及率は,近年著しく増加しており,その傾向は今後も高まってゆくものと考えられる.その大きな牽引力の一つとなっているのがマイクロエンドであろう.

 昨今では大学卒業後の間もない時期から日常的にマイクロスコープに触れ,その中で自然にマイクロエンドを行う若い歯科医師も育ち始めている.しかしながら,マイクロスコープの基本的な操作方法や原理をはじめ,マイクロエンドに関して系統的に教育する環境は十分とは言えないのが現状である.現実的には多くの歯科医師が実際の臨床でマイクロスコープを試行錯誤しながら応用し,その中でたたき上げるように技術を身に付けていると言っても過言ではない.

 マイクロエンドについての解説書は多数出版されているが,本書のように「ポジショニングとミラーテクニック」という具体的な項目に主軸を置いた書籍は少ない.歯周療法や修復処置では,舌や頰粘膜を圧排しながら直視で行う治療が推奨される場面もあるが,マイクロエンドに関しては主に咬合面からの根管内部の観察のみであることから,ミラーテクニックは基本であり,重要なテクニックである.

部位ごとに見たポジショニングの有用な解説

 本書はポジショニングとミラーテクニックを中心としているが,最初に,マイクロスコープを応用するに当たって最低限知らなければならない構造やセッティング,焦点距離や被写界深度等,マイクロスコープを実際に操作する際に必要な知識の解説がなされている.そのうえで,マイクロエンドにおける重要な基本であるラバーダム防湿や隔壁法,そして映像による情報提供について,さらには根管解剖まで簡潔に述べられている.著者が臨床で実際に使用している便利な器材が多数紹介されていることも,初心者のみならず,経験ある歯科医師にとって有益な情報であろう.

 そして,本書の肝といえるポジショニングとミラーテクニックについては,前歯・小臼歯・大臼歯と分けて,上下顎左右側のすべての部位について,術者とアシスタントの位置,マイクロスコープの角度やミラーの位置,さらにアシスタントが持つバキュームと3ウェイシリンジの位置などの詳細が,なぜそのポジションとテクニックが有効なのかという理由と共に具体的に解説されている.

 特に有効と感じたのは,間違ったポジショニングと見え方が示され,その解決方法が解説されていることである.筆者自身,思い当たる節が多々あり,その修正方法は大変役立っている.

エンド以外の治療にも参考となる

 マイクロスコープを応用した精密な臨床は,治療の質を高め,問題を解決に導いてくれる.私たち歯科医師が長期的に臨床の場で力を発揮するために,マイクロスコープは大いなる武器となるだろう.

 マイクロスコープを日々応用して感じることは,自分の身体の一部のように自由自在に使いこなすためにはポジショニングの知識と技術が非常に重要であるということだ.いかに無駄なく,正しい姿勢で診療を続けられるかどうかということは,やがて起こりうる私たちの身体への疲労や悪影響を避ける鍵となる.

 エンドのみならず,マイクロスコープを応用したすべての治療におけるミラーテクニックという観点からも,本書は大変参考になるものである.


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